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2011年12月15日 (木)

拾った財布は

 「芝浜」で勝五郎が拾った財布とネコババせずに、女房がお上に届けてのちに払い下げられます。この噺の根幹にかかわる仕組みは現代の落し物の持ち主が現れずに拾い主のところに戻ってくるのと同じです。今は3カ月で下げられるのですね。

 芝浜は幕末から明治に活躍した圓朝が作った三題噺といわれているわけですから、このシステムはその当時から確立されていなければなりません。これまでその解説に巡り合ったことがなかったので、ググって見つけた本を借りました。「大江戸世相夜話」(藤田覚・中公新書)です。東大教授が江戸研究の際に見つけた論文にまでは至らない資料をまとめた本ということです。

 そのものズバリ「拾った金は誰のものか」という章で、いきなり「芝浜」を例に出してあらすじを語っています。地位のある研究者でも江戸と落語は切り離せないものがあるのだなあと感じました。それまでの章でもたびたび落語が例に引かれています。
 さて、拾得物の処理はきちんと法令で決まっていたそうです。抜き書きしますと、「御定書百箇条」に「拾った者はその近くに立札を立てて拾得物を知らせる→落とし主が現れたら返す→現れなければ奉行所→奉行所が公開→6か月経て落とし主がなければ拾い主に」と規定されていたそうです。「落とし主が分かったら半額謝礼」というように高額が課せられて落としたという責任を問うようになっているとのこと。

 届けられたお役人が権力をカサに取り上げてしまっても泣き寝入りだろうに、とも思っていましたがけっこうきちんとしていたようです。

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コメント

この落とした財布のことは私もかって調べた事があります。
落語関係では殆ど書いていませんね。
六ヶ月経つと、自分のものになるのは以前の今の法と同じですね。
案外、江戸時代の法令の残りだったりして・・・(^^)

その時調べた時に、ネコババしても罰されなかった、と思いましたが、
その辺も書いてありましたか?もしお判りなら教えて戴きたく存じます。

投稿: hajime | 2011年12月15日 (木) 16時46分

 ネコババについてもつづけて記述がありました。過料が科せられたそうです。この本の中でも「三木助や志ん生の『芝浜』中で遠島や打ち首と演じているよりも軽い」と書いてあります。
 ただしその実例が、「小梅(墨田区)の町人が娘の拾った鞍の部品を売り払って三貫文の罰金」だそうで、金額が大きかったらどうだったか。十両盗めば首が飛ぶ時代ですから。

 また、落し物とは違いますが、掘り出した古い金(両替しておよそ百五十両)をネコババして反省し、後日届け出た三重の町人が、全額没収の上「急度叱り」処分(厳重注意)。ただその後半額を落し物同様に下げ渡したと記述しています。
 届けていないでばれたらどうかはわかりません。

投稿: snob | 2011年12月15日 (木) 18時01分

面白いですね。
「御定書百箇条」ってのは「公事方御定書」の下巻にあたるのですかね?

こういう一次資料をよみこなせると楽しいんだろうなと思うんですが、文化センターでやってる「古文書読解講座」みたいのに行けば良いのかしら?
でも、落語を聴く時間も足りない現状を考えると無理だな~w

とりあえず、ご紹介頂いた本を読みたいリストに追加です。

投稿: nam | 2011年12月15日 (木) 18時01分

 一次資料は…お手上げです。日本人なのに、とは思いますが、英語のほうがましだったりします。
 あの草書体の文字を読むのもアレですが、それを伴四郎日記の文章内に活字で書き下してあっても焦点が合いません。さらに現代文に翻訳してないとつらいです。
 でも世の中…そして図書館には山のように宝がある、と思って探し出すのもまた楽しかったりします。

投稿: snob | 2011年12月15日 (木) 21時56分

ネコババについての御回答有難うございます。
今と同じ様な感じだったのですね。
興味深いですねえ。
「大江戸世相夜話」検索したら葛飾にもあるので、今度借りてみます。(^^)

投稿: hajime | 2011年12月15日 (木) 22時07分

 東京にはほんとに江戸に関する資料が豊富です。おひざ元といえばあたりまですし、そもそも予算=蔵書の量が違います。それが区民以外に貸し出してくれるのだからありがたい限りです。

投稿: snob | 2011年12月15日 (木) 22時26分

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