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2012年6月27日 (水)

「猪買い」は江戸でできるか

 現在の多くの江戸落語は、「上方落語から江戸に移植した」という解説に当たります。元は上方でも、十分に江戸の香りが染み込めば違和感なく聞くことができます。それどころか、大阪の人には申し訳ないですが、私なんか江戸移植版のほうが好きです。

 そんな中でも「池田の猪買い」は江戸落語に移植された形跡がありません。ずっと不思議に思っていました。誰かトライしても定着しなかったのでしょうか。道を通りがかりの人に聞くやり取りも面白いし、目を回した猪が息を吹き返して「ほら新鮮だ」というサゲも、効いていると思います。

 すると、あるとき、移植は難しいのだという話を読みました。「1、大阪と池田の距離感に見合う範囲では狩りができない」「2、江戸市中でも肉が手に入るので、わざわざ出かける理由がない」の2点が問題になるのだそうです。

 2については、確かに広重の浮世絵でも「山鯨(=猪)」を看板に掲げた店が描かれていますし、今もある両国橋のたもとの「ももんじや」は享保年間から続くそうです。その「ももんじや」という言葉も、もともとは獣肉店の一般名称としてつかわれてもいました。薬食いと称して無理なく猪肉が手に入ったことがわかります。
 でも、「池田の猪買い」でも「大阪で売っているような肉は新鮮ではない、池田の猟師から直に取れたての肉を買わないといけない」といって出かけるのですから、江戸でもそんな話になっても問題ないと思います。

 1の猟場との距離ですが、演出でどうにでもなってしまうことだと思いました。多摩に数日かかけて出かけて行ったって話としてはかまわないし、あるいは旅先での話として、宿から猟師を紹介してもらうのでもいいでしょう。

Yamakujira

 そういう演出については本職の落語家さんが考えることなので、私が関心を持ったのはこの先です。本当に江戸市中から1日の距離で猟師にあうことはできなかったのか?ということです(大阪・どぶ池―池田・山麓間は40キロ弱)。

 ここは腰を上げて図書館で資料探しです。漠然と「県史・市史」の類を見れば江戸時代の産業について、猟・猟師についてわかるのではないかと思いました。でも分厚いので、まず、図書館スタッフに相談してみました。カウンターにいたのは図書館長さんで、民俗学会の会員の方だったので、話が弾んでしまいました。

 秋田などの山間部の狩猟については文献もあるが、関東の平野部に関しては聞くことがない、そうです。ただし、市中に近いところでは目黒や豊島、離れて越谷・鴻巣・東金などに将軍お鷹場があり、鷹狩の際は農民も勢子として駆り出されていました。

 このあたりなら、距離はピッタリです。ただし、お鷹場であるがゆえに日頃は鳥獣を追い払うことも禁じられていました。そのまま考えれば、職業猟師はありえないのです。話はここでおわり…ません。「お鷹場での狩猟を禁じたお触れがある」ということは、逆にお鷹場周辺では猟が行われていたからではないでしょうか。現在の法律だって犯す人がいるから立法化があるのですから。

 とりあえず、初心者向けに勧められた千葉徳爾(とくじ)・「狩猟伝承」(法政大学出版会)を取り寄せて借りることにしました。他館取り寄せは時間がかかりますが、届くのが楽しみです。

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コメント

ご無沙汰しています(^^)
やっと仕事も一息つきましたので、そろそろ本格的に復活しようと思っています。
江戸時代も文化文政の頃は江戸ではかなりおおっぴらに猪や猿を食べていた様ですね。
麹町の「山奥屋」が有名だったそうです。
江戸には武士が多かった性で、肉食も抵抗無く受け入れられていたそうです。
将軍からして彦根藩から献上された牛肉を食べていたそうで、このあたりからも肉食に対する抵抗は薄かったと思われます。

何故、「池田の猪買い」が移植されなかったかと云う事ですが、
関東では、池田=猪と言うイメージがあるのに、東京周辺ではそのようなイメージの土地が無いと言うのも一因では無いかと考えました(^^)

あとは、明治の頃の東京の落語の客は東都の真ん中に住んでいる客中心だったと言う事もあるかと・・・
その人達にとって極端な話、遠い処での出来事では興味が薄れたのかとも思うのです。
もっと遠くで「蒟蒻問答」みたいに上州の出来事とかにすれば展開が違っていたかもしれません。

長々と駄文を失礼しました(^^) 戯言として読んで下さい。

投稿: hajime | 2012年6月28日 (木) 09時16分

 仕事がお忙しい=求められているのは素晴らしいことです。

 移植されなかった噺というと、「お玉牛」「手水廻し」とか考えていたら、歌武蔵が「手水廻し」をやってました。
 以前に移植されなくても、落語家の数に対して噺の数が足りないといわれているのですから、これからのこととして思考実験するのも面白いと思いました。

 江戸近郊の民間狩猟に関してはあまり記録が残ってないそうなので、歴史事実と関係なく創作してしまえば、話は成り立ってしまうのですけどね。
 自分で調査する能力はないので、どこまで資料が見つかるか気長に探してみようと思います。

投稿: snob | 2012年6月28日 (木) 09時48分

こんにちは。

酒井伴四郎も風邪をひいた時に「薬食い」として豚肉を買ってましたね。
調査の結果は是非ともブログに書いて頂けると嬉しいです。
楽しみにしています。


図書館のレファレンスが頼りになりそうな方なのは良いですね。
昨今は公営図書館のみならず大学図書館でも、運営を民間委託するケースが増えているようですが、レファレンス機能もシッカリ維持されているのかが気になります。
Tutayaに運営を委託する図書館が話題になっていましたが、大丈夫なのか?

地域の図書館のレファレンスは子ども達の調べ学習の宿題の手伝いが主だとも聞きますが、それはそれで重要な業務だと思います。

投稿: nam | 2012年6月28日 (木) 12時43分

namさん、こんにちは

>調査の結果
もともと資料が少ないそうなので心細いですが、気長に追ってみたいと思っています。

>レファレンス

そうなんですよ。もっと図書館司書は利用すべきです。といっても小説を読むとかCDを聞くだとかではあまり頼ることはないですが。図書館側のアプローチも足りないとも思います。

投稿: snob | 2012年6月28日 (木) 17時18分

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