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2012年12月12日 (水)

落語讀本(文春文庫)

 同じ矢野誠一さんで出ているので、どんなのかなという興味で借りてみました。1989年刊行。表紙に副題で精選三百三席とあります。マーケットプレイスでは41円から1800円までまちまちです。ところで同じ矢野さんの「志ん生のいる風景」など文春文庫2点がKindle用の電子書籍で再刊されていますから、あるいはそういった形で再び世に出るかもしれません。

 それというのも、303編が50音順に並んでいないのです。季節で五つに分類されています(春夏秋冬と新年)。50音順でなくても、目次でページを調べてめくる手間は並んでいる場合と同じです。困るのは目的の噺が入っているかどうかわからないこと。
 ところが、巻末に落語リストがあり、ページも入っているので、ここを目次に使えば50音順と変わりありません。こういう本は一度は掲載順に全部目を通すでしょうけど、調べるのに使うときは目的のものの場所さえわかればいいのです。このリストは「落語手帖」とちがって演目一覧ではありません。太字は掲載してある題名、通常文字は別題名(「麻のれん」と「按摩の蚊帳」など)
 このへんが、もし電子図書になればワンタッチでジャンプするはずなので使い勝手がよくなるでしょう。
Tokuhon

 体裁が文庫本で、1演目2 or 1ページですから「落語手帖」α文庫よりスペースが小さい計算です。だから、あらすじも短くしてありますし、その他の情報は、各演目で「うんちく」「味わい」「こぼれ話」「噺の成立」「能書き」「雑学」などから選択・組み合わせて記述しています。

 「時そば」で確認すると、寄席文字の題名がめくりの形の枠に入って始まります。

時そばときそば
 時うどん
あらすじ 往来で夜鷹そばをよびとめた男。看板、割箸、丼、だし、蕎麦、ちくわなど、すべてのものをほめちぎり、「いくらだい? 十六文、銭は細かいよ。一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、六つ、七つ、八つ、いま何どきだい?」「九つで……」「とお、十一、十二……」と、うまく一文ごまかした。これを見ていた別の男、俺もやってみようと、翌る晩こまかい銭を用意して少しはやめに別のそば屋をつかまえた。前日の男のように世辞をいおうとするのだが、すべてひどくてほめようがない。勘定を払う段になって、「一つ、二つ、三つ、四つ、五つ、六つ、七つ、八つ、いま何どきだい?」「ヘェ、四つで」「五つ、六つ、七つ……」

味わい 落語をほとんどきいたことのないひとでも、この『時そば』の巧妙なる勘定のごまかし方は知っている。酔っぱらって、のみ屋の親父やタクシーの運転手を相手に、こんな冗談を演じた体験のあるむきも少なくないはずだ。
 それだけに、落語家の側からいうならば、『時そば』は決してやさしいはなしではない。おなじように人口に膾炙している『饅頭怖い』にしてもそうだが、かんじんのサゲばかりでなく、はなしそのもののすべてが、きき手に熟知されてしまっているのである。そんなきき手を納得させるちからといったら、落語家の個性的な語り口、つまりは「藝」ということになるか。
 きき手の立場にしても、先刻承知しているはなしに、くりかえし何度でもふれたいというのは、その落語家の持ち味によって、おなじ『時そば』というはなしに、まったくちがった色彩を発見したいからなのである。
 落語は、誰をきくかが大事なのであって、何のはなしをきくかは二の次だなどとよくいわれるが、この藝の本質を過不足なくいいあらわした言葉だ。その意味でも『時そば』は、典型的な落語なのである。

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コメント

 いろんな演目を収める場合は、索引と云うのは重要なんです。
 落語を春夏秋冬で分類する場合であっても、総索引を五十音別で作るべきです。お前のブログはどうなんだと仰るかも知れないが・・・チッチッチ、ウチのブログほど完璧な索引を作っているブログを私は知りません(^ω^)

投稿: 藪井竹庵 | 2012年12月12日 (水) 23時14分

 その節は索引を大いに利用させていただき、助かりました。そしてその索引を使うためにYahoo!アカウントを取ったのでした。で藪先生に、ブログを始めては?という鯉コメをもらった覚えがあります。それ以来細々と続けております。

投稿: snob | 2012年12月12日 (水) 23時44分

〉1演目1ページを守っていますから

一部の演目で2ページになっているものが有ったような。
出先なので確認できておらず、ごめんなさい。

手元にある「古典落語シリーズ(興津要)」の青空文庫フォーマットのテキストにWebの「千字寄席」「上方落語メモ」をダウンロードしたものを統合して、ウィンドウズヘルプにコンパイルしたら語句検索も出来て便利かもと妄想したことが有ったのですが、時間が取れなくて挫折しました。
まあ、Webにあるものをわざわざローカルに置く必要があるかは疑問ですが。

投稿: nam | 2012年12月13日 (木) 13時44分

2ページか1ページでした。ご指摘感謝。

>Webにあるものをわざわざローカル

私もそう思っていましたが、先週、「千字寄席」の記事を書くためにアクセスしたら数日間、エラーになってしまいました。
あるいは書籍が再刊されるのかとも勘ぐったのですが、しばらくして復帰しました。万一に備えて、あわててローカルに保存をしました。
「古典落語」はまもなくとりあげようと借りてきましたが、あれが「大尾」までテキストになっていればすごいです。
 HTMLヘルプになってからヘルプファイルを作ったことがありませんでしたが、単なるHTMLより検索が装備されてすごいデータベースになりそうですね。

投稿: snob | 2012年12月13日 (木) 14時33分

この本はかなり以前に購入して、ボロボロになるまで読みました。
「落語手帳」に無い演目もありました。
(私としては、手帳にあってこれに無いのだと思っていました)
手頃な大きさなので、いつも持ち歩いていました。
それが2年程前に仕舞い忘れてしまい行方不明です。(^^)

投稿: hajime | 2012年12月14日 (金) 06時25分

やはりみなさんいろいろ持っておられますね。こういう書籍ってわざわざ図書館に見に行くのって、よほどちかくにないと面倒で、手元に置きたくなりますものね。

投稿: snob | 2012年12月14日 (金) 08時33分

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