« 「愛宕山」のコチャエ節 | トップページ | 日本の行き先 »

2013年3月20日 (水)

言葉は波紋のように

 歌というと、正月七草の時に、一家の主がまな板で菜を刻みながら、「七草なずな、唐土の鳥が…」が、江戸期には吉原でも歌われていたという記述を最近読みました。
 昭和ひと桁下町生まれに聞いても記憶がないとのことですから、東京では早くにすたれています。落語「七草」では現・金馬さんが伝えている歌ですね。
 落語でしか知らなかったものが、地方では現役の風習だというのは数年前にニュース映像で知り、一人で歓声を上げたものです。文化の過去が周辺に残る実例でした。

 先週は、期せずして、一朝ウィークでした。TBS落語研究会、MX東京スカイ座、ラジオ寄席SPで春風亭一朝さんがかかりました。保存まではしませんが、好意を持って聞く噺家さんです。
 MXは再放送で「蛙茶番」でしたが、録画を流し見をしていて、ふと言葉が気になって映像を止めました。建具屋の半ちゃんが、緋縮緬の褌を番台で預かってもらうときに「大事な褌だよ、ぎられちゃいけねぇから油紙に褌をつつんで…」

 ”ぎる”というのは盗むことで、この言葉を聞いたのは数十年ぶりでした。国語辞典には載っていません。学生時代に旭川出身の友人が「おんじ(弟)に、ぎられた…」と言って意味が分からずに教えてもらった記憶が強く残っていたのです。
 久しぶりに聞いたということは、何度も繰り返し聞いた金馬や圓生の「蛙茶番」では”ぎる”は聞かなかったはずです。確認するとやはり”盗られる”と言っています。
 一朝さんの師匠の柳朝の音源ではもしやと思いましたが、やはり”盗られる”でした。NHK大河ドラマで江戸言葉指導とクレジットされた一朝さんですから意図して使っているのだと思います。足立区生まれで、古くは使われた言葉なのか。

 言葉は変化するものですが、方言は地方で言葉が変化したものではなく、文化の中心から地方に変化が伝わるというのが、柳田国男の方言周圏論です。つまり周辺のほうに古いものが残る。同じ方言が京都を中心に同心円状に見つかることから唱えられた言語地理学の基本的な考えとなっています。
 ”ぎる”もそうなのかなぁと漠然と思いをはせました。

|

« 「愛宕山」のコチャエ節 | トップページ | 日本の行き先 »

コメント

「ぎる」は子供のころに使っていました。
余り品の良い言葉ではないイメージだったと思います。

北海道弁として紹介されることが多いようですね。
一般的ではないにせよ、北海道では今も通じる言葉なのでしょう。
もっとも北海道固有の言葉ではなく、古い日本語が北海道に残っているということなんでしょうね。

ネットで検索してみたところ「昔の茨城弁集」というサイトで紹介されていました。
  http://www1.tmtv.ne.jp/~kadoya-sogo/ibaraki-ki.html
また麻雀用語で「山や河から不正に牌を持ってくること」の意味で使用するようです。
  http://www.mj-dragon.com/glos/ki/giru.html
私は麻雀をやったことがないので知りませんでしたが。

投稿: nam | 2013年3月20日 (水) 15時03分

>北海道弁として

 北海道(or旭川地方)では悪い意味があまりないからなんでしょうね。東北や北関東では隠語的に使われるようです。それだけに一朝さんからぽんと飛び出したのが耳にとまったのでした。

 半ちゃんは職人ですが、特に悪ぶって使っている演出ではなかったです。

投稿: snob | 2013年3月20日 (水) 16時20分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 言葉は波紋のように:

« 「愛宕山」のコチャエ節 | トップページ | 日本の行き先 »