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2013年3月18日 (月)

柳田格之進(5)

 ここから蛇足になりますが、たまたま資料を続けて見つけたので、記録に残します。もともとこの噺より、「井戸の茶碗」のほうが好きで噺の構成もオチも完成度が高いと思います。このところ志ん朝ばかりを聞いているのですが、「井戸」に目頭を熱くしました。

 圓楽の「柳田」も借りて聞いて、以前の記事に追加をしました。やはり娘の扱いで苦心していますね。
 というわけで、明治の柳枝の速記を見たくなりました。探してみると、落語速記の「百花園」は国会図書館にはありますが、どの号に掲載されているか、検索ができません。しかし、復刻版が講談社から「明治大正落語集成」第2巻に掲載され、利用が容易です。

Mtrakugo

 タイトルは「碁盤割」です。さすがに長いので概要を記しますが、喋りだしは

 エー今日は碁盤割と申します一席話を御披露致します。
 藤堂様の御家来に柳田格之進という御方が御座ります。故あって御浪人を遊ばし、浅草の東仲町に裏店住居をしておいでなさります。その地主が越前屋作左衛門と申しまして、至って豊かに暮らして居ります。……もっとも此の話は随筆にも御座いまする。


 と、固有名詞が多少違います。柳田と主人が碁を囲む場面は簡略で、番頭の久兵衛が財布を渡したことは柳田の帰宅ののちに回想されます。金がなくなっていることがわかって何度も探した後、番頭が疑いをかけて、主人が否定するのは同じです。金額は百両です。

 イヤ……久兵衛、それはおまいの料簡違い……どうしてなかなかあの方はそんな方でない
 あなたは惚れていらっしゃるから御疑いなさるまい……(略)私はあの方の目の据わり様が気に入りません
 それは剣術を御使いなさるから…剣術を使う方は皆そうだ。剣術眼といって据わっているものだ
 イエ……剣術眼ばかりではありません……泥棒眼も少しは雑じっております

 そして、番頭が柳田のところに探りに行き、柳田が認めないので訴えでるとおどします。柳田は、長く浪人していたが、重役の尽力で帰参が叶うことになっていると、身分に係る。自分はいいが重役に悪い。その場にいなかったことにしてくれと頼みます。
 番頭が拒むので、明日百両を返すからと大小の刀を預けます。話をすると主人も驚いて、「人は見かけによらないものだ」と納得するのは、原話の通りです。翌日番頭が再び柳田を訪ね、金を受け取ります。そして金が出たら首を取る約束になります。やがて柳田は帰参して立ち去り、越前屋では柳田がずるかったのだと思っています。

 そして煤払いで額の裏から金が現れます。越前屋は迷わず和泉町の上屋敷に柳田を訪ねさせます。そこで出迎えるのは柳田の妻、菊。金を返すという久兵衛に柳田は、お前にやるから世話になった奉公人に何でも買ってやれ、その代り首を持って来たろうな。番頭は店に飛びかえります。

 ご勘弁ないか。…仕方がない……何と仰るのだ
 私は頓でもないことをしました……あの時厳しく掛合われ、長の流浪中で蓄えも薄かったから息女の身を沈めて才覚した金だと仰りますのです。あの百両の金はお嬢さんの身を沈めて御返しになったのだそうです
 嗚、そうかお嬢さんの身を沈めて……何とも気の毒千万……


 なんと娘、花を身売りするのは夫婦の相談づくだったのです。そして柳田は挨拶抜きで越前屋に上がり込み、碁盤を座敷の真中に置く。とった首の台にでもするのかと主従が思っていると、立ち上がって見事に真っ二つ。

 作左衛門殿……此の品さえなかったらば、懸る間違いは起こらなかったろう。御貴殿も拙者も同じこと、此の後は慎みましょう
 と格之進殿碁盤を割って、ご勘弁に相成った。格之進碁盤割という一席で御座ります。


 花のことには、触れずに終わります。明治25年の「百花園」掲載。娘への配慮は、柳田家も柳枝も客にもなかったと思われます。

 比べてわかりましたが、私がここに書くまでもなく、「千字寄席」サイトのあらすじがこれですね。

 「百花園」は国会図書館にも欠巻があるそうですが、この4月からデジタル復刻されて全240巻を日外アソシエーツから配信されることを知りました。高精細度デジタル画像による復刻プロジェクトとのこと。http://www.nichigai.co.jp/feature/hyakkaen.html に詳細。

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