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2013年4月 2日 (火)

柳田格之進(6・後)


 浪曲とはこういうものでしょうか。「水清ければ魚棲まず、人賢なれば友無しとはよう言うた」という調子で始まります。要所要所に「一夜明くれば元旦の、何処も同じ松飾り…」と五七調の語りが挟まります。

 彦根の家来柳田角之進は実直すぎて、浪人し、浅草馬道の寺に借家します。奥さんは早くなくしていたので、娘お絹と二人暮らし、なにすることなく遊んで暮らします。碁会所で萬屋源兵衛と知り合って、店に碁打ちに通います。
 源兵衛宅では、柳田をなにくれともてなしますが、世辞も言わないので店のものには受けが悪いと伏線を張ってあります。

 金がなくなったときの番頭・徳兵衛とのやり取りには、「五十両を小遣いにして処理しなさい」といった落語と同じ設定が出てきます。
 番頭が柳田宅に掛け合いに行き、金を返す話になります。お絹が縁を切ってくれと申し出、許されると身売り話。源兵衛が金に驚いて様子を見に行かせると、書置きがある、と現行の落語と筋運びが変わりません。

 正月に湯島で番頭と再会した柳田は、青山の松平家の留守居役という大出世をしています。そして首をもらいに店に行き、碁盤をたたっ切ります。

 柳田をもてなす間に事情を知った、主人源兵衛は席を外して、お絹を身請けして養女にして戻ります。
 「私どもには子供がございません。幸いに娘をやろうという者がございました」と絹を合わせます。柳田は「婿を世話しよう。親子の縁を切っているから親(柳田)に苦情もあるまい」と番頭・徳兵衛と結婚させます。ここで番頭が48歳であることが明かされます。娘の絹は19歳。年は違っても柳田の家も萬屋も栄えて、目出度しめでたし。


 時期は先かどうか出版年ではわからないものですが、この講談の出だしは「ならぬ堪忍をよく守って、双方家繁盛致したという御目出度い講談」です。
 井伊家の家来の柳田覚之進、娘・絹、主人・萬屋源兵衛、番頭・徳兵衛が、現行落語や2の浪曲と同じ筋立てで進みます。主人源兵衛は柳田に男惚れしていると言明しています。
 やはり松平家に仕官した柳田と番頭が湯島で出会い、源兵衛は喜んで手討ちになろうと覚悟します。
 碁盤を斬って両名を許した柳田に、お嬢様はどうしましたと尋ねると、親子の縁を切って身売りをしたとの返事に驚き、吉原に詳しい番頭・利八に確かめます。
 松葉屋は萬屋も金を貸している遊郭で、綾衣という源氏名で出ていることがわかります。待たされた柳田はもう帰ろうとするところでしたが、「武家から娘を一人もらいました。武家ですが喜んで承知してくれました」と身請けしたお絹を引き合わせます。
 娘は縁切りをした身なので、「今更お父様と名乗るわけにもいかない」。柳田も「無事でいたかと」声をかけることもできない。
 そして番頭徳兵衛を婿にするようはからって、柳田は寿を祝います。番頭・お絹が萬屋を相続することになり、柳田は松平の殿様から目をかけられてますます御家ご繁盛と結びます。

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 柳枝の噺とちがって、どれも娘の行く末に気を配っていることがわかります。1の講談など、筋が大きく異なっていて、娘は無傷で戻り、番頭との年の差も気にして、息子・徳三郎という結婚相手を作っています。明治の頃から同じなんですね。

 WEBにいくつか、志ん朝の「柳田格之進」に、「ハッピーエンドにするため、無理に娘が結婚するようにした」といった批判が見られました。それが的外れであることがわかったのは収穫でした。
 また、当時「親子の縁を切る」と、その後の行動に「名乗りもできない」などと大きな制約をかけることが、共通認識だったこともわかります。
 ながなが柳田に、お付き合いありがとうございました。
 

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コメント

〉志ん朝の「柳田格之進」に、「ハッピーエンドにするため、無理に娘が結婚するようにした」といった批判が

それがコピペされたり、孫引きされたりもあり得ますよね。私もやりそう。

落語ファンでsnobさんの様にしっかり資料にあたって検証される方は少ないような。
でも、特に批判的なことを書くときはある程度ウラを取らないといけませんね。

投稿: nam | 2013年4月 3日 (水) 12時37分

いやー。つい気になったことは調べたくなる性質で…。そういう時に図書館って本当に便利です。今になってそれがわかったのが惜しい。20年前なら絶対残っていたはずの音源もあります。

 志ん輔の「格之進」では、絹は身請けされて仏門に入った(結婚しない)設定だそうです。これからもいろいろな人がそのときどきの合理的な解釈を工夫していくのでしょう。

投稿: snob | 2013年4月 3日 (水) 13時10分

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